大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪高等裁判所 昭和63年(行コ)46号 判決

控訴人(原告) 松本博

被控訴人(被告) 松本一郎

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一申立

一  控訴人

1  原判決を取消す。

2  被控訴人は、高野口町に対し、七八三四万円を支払え。

3  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文同旨

第二主張

次のように訂正、付加するほか原判決の事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

一  原判決七枚目裏五行目の「監査結果」の次に「通知書」を付加し、同八枚目裏五行目の「協議会」を「協議会、文教委員会」に、六行目の「誘地」を「誘致」に、同九枚目裏九行目の「当審訴訟記録中調書の」を「原、当審の訴訟記録中の証拠に関する目録」に各改める。

二  控訴人の主張

1  控訴人の住所は、次のように二か所ある。

(1) 控訴人は、高野口町に、住民票をおき、町民税を納付し、自宅を有する。自宅には、控訴人の扶養する養子が居住しており、控訴人は、週二回位訪れている。

(2) 橋本市では、控訴人は、愛人と生活している。

2  ところで、地方自治法の住民監査請求、住民訴訟の制度は、米法の「納税者訴訟」の制度を導入したものであり、請求者の権利の根源には、「税負担」に基づく適正な税金の消費に対する納税者の監視権を保障するものとの思想がある。

3  したがつて、控訴人は、住民票があり、町民税を納付している高野口町の住民であり、同町に代位して住民訴訟を提起する原告適格がある。

三  被控訴人の主張

控訴人は、昭和五六年頃から、高野口町に居住する妻子の許を去つて橋本市内で愛人と生活している者であり、昭和六〇年九月には、高野口町に所有していた自宅(土地建物)を売却し、同町には住民票の記載は残つているが、住所はない。

理由

当裁判所の認定判断は、次のように訂正、付加するほか、原判決の理由説示のとおりであるから、これを引用する。

一  原判決一〇枚目裏一〇、一一行目の「財政上の違法、不当な行為」を「違法、不当な財務行為」に改める。

二  同一二枚目表七行目冒頭から九行目の「ところ、」までを「3 ところで、民法二一条にいう「生活の本拠」とは、人の生活関係の集中している場所的中心を指すものであつて、単に人がある場所を自己の生活関係の中心とする意思を有するだけでは足りず、その場所が客観的にみてその人の生活関係の中心であると認められる状況が必要であるといわなければならない。そこで」に改める。

三  同一二枚目表末行の「第四号証、」の次に「第一六、一七号証、」を、同裏末行の「譲渡してしまつた」の次に「(なおこの建物は平成元年一月二五日撤去された。)」を、同一三枚目表末行の「乙第一号証」の次に「、成立に争いのない甲第七号証、乙第一五号証」を各付加する。

四  同一三枚目裏六行目の「いること」を「おり、控訴人は同町に昭和六三年度分の町民税の納税をしていること(なお、昭和五八年度ないし六二年度分については、所得の申告なく、町民税の納税はない。)」に、七行目の「原告が」から八行目末尾までを「以上の事実によつても、高野口町が、控訴人の生活関係上の中心であると認めるに足りないから、同町に控訴人の生活の本拠があるということはできず、控訴人は生活の本拠すなわち住所を二か所有する旨の当審における主張は採用できない。」に、九行目の「以上によれば、」を「わが国の住民訴訟は、米法の納税者訴訟を範として定められた制度ではあるけれども、同法とは異り、住民訴訟における原告適格は、当該自治体に住所を有することが要件とされていて、納税者たることが要件とされていないのであるから、」に、末行の「認められ、したがつて、」を「認められる以上、」に各改める。

よつて、控訴人の訴えを却下した原判決は正当であつて、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき民事訴訟法第九五条、第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 今中道信 仲江利政 上野利隆)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例